相談支援事業所の適正な業務運営に向けたガイド

計画相談支援・障害児相談支援における適正な業務運用に向けたガイド

特定⾮営利活動法⼈⽇本相談⽀援専⾨員協会(令和7年5⽉作成)

本ガイドは、全国の相談⽀援事業所が、計画相談⽀援および障害児相談⽀援を適正に実施できるよう、基準・通知・指導監査等の視点に基づき、必要な⼿続きと運⽤⽅法を整理したものです。特に、法令遵守に基づく適正な相談⽀援業務の実施を⽀援することを⽬的としています。

目次

① 契約・重要事項説明・個人情報同意

利用開始にあたっては、契約書および重要事項説明書を交付し、内容を説明し、利用者または保護者の同意を得なければならない。また、個人情報の取扱いについても適切に説明し、同意を得ることが求められる。
これらの説明および同意取得に関する記録は、業務記録の一環として整備・保管しておくことが望ましい。

社会福祉法 第76条、77条
個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)第17条、18条
個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)

② 支給決定申請支援

支給決定または通所給付決定の有効期間の終了に伴い、申請者が余裕をもって更新申請を行えるよう、必要な援助を行う。
「支給決定の申請について、必要な援助を行わなければならない。」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第10 条
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第10 条

③ アセスメント(居宅訪問・面接が必須)

利用者の居宅を訪問し、面接により心身状況・環境・希望等を把握することが義務づけられている。
「相談支援専門員は、アセスメントに当たっては、利用者の居宅等を訪問し、利用者及びその家族に面接しなければならない。この場合において、相談支援専門員は、面接の趣旨を利用者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24 年厚生労働省令第28号)第15条第2項第7号
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24 年厚生労働省令第29号)第15 条第2項第6号

アセスメントの実施にあたっては、面接内容、心身状況、環境、希望等の把握結果を記録として残さなければならない。
「指定特定相談支援事業者は、前項の規定によるほか、次に掲げる記録を作成し、これを5 年間保存しなければならない。個々の利用者ごとに、サービス等利用計画案及びサービス等利用計画、アセスメント、サービス担当者会議、モニタリングの結果等を記載した相談支援台帳」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第30条第2項第2号
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第30 条第2項第2号

④ サービス等利用計画案の作成

・アセスメント結果を踏まえ、希望する生活像と必要な支援・目標を具体化した計画案を作成する。
「利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、提供される福祉サービス等の目標及びその達成時期、福祉サービス等の種類、内容、量、福祉サービス等を提供する上での留意事項、法第五条第二十三項に規定する主務省令で定める期間に係る提案等を記載したサービス等利用計画案を作成しなければならない。」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第15条第2項第8号
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第15条第2項第7号


・サービス等利用計画・障害児支援利用計画の作成にあたっては、フォーマルな福祉サービスに限らず、地域における住民による自発的な活動や支援(インフォーマル資源)も含めて、日常生活全般を支援する観点、および障害児においてはインクルージョンの観点からも、計画上に位置付けるよう努めなければならない。
「サービス等利用計画の作成に当たっては、利用者の日常生活全般を支援する観点から、指定障害福祉サービス等又は指定地域相談支援に加えて、指定障害福祉サービス等又は指定地域相談支援以外の福祉サービス等、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めてサービス等利用計画上に位置付けるよう努めなければならない。」
「障害児支援利用計画の作成に当たっては、障害児の日常生活全般を支援する観点及びインクルージョンの観点から、指定通所支援に加えて、指定通所支援以外の福祉サービス等、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて障害児支援利用計画上に位置付けるよう努めなければならない。」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第15条第2項第3号
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第15 条第2項第3号

⑤ サービス担当者会議(利用者参加が原則)

計画案の作成・変更時に、利用者と関係者を招集し、内容説明と意見聴取を行う。
「相談支援専門員は、支給決定又は地域相談支援給付決定を踏まえてサービス等利用計画案の変更を行い、指定障害福祉サービス事業者等、指定一般相談支援事業者その他の者との連絡調整等を行うとともに、サービス担当者会議(相談支援専門員がサービス等利用計画の作成のために利用者及び当該変更を行ったサービス等利用計画案に位置付けた福祉サービス等の担当者(以下この条において「担当者」という。)を招集して行う会議をいい、テレビ電話装置その他の情報通信機器(次条、第二十二条第三項第一号及び第二十八条の二第一号において「テレビ電話装置等」という。)を活用して行うことができるものとする。以下同じ。)の開催等により、当該サービス等利用計画案の内容について説明を行うとともに、当該利用者の生活に対する意向等を改めて確認した上で、担当者から、専門的な見地からの意見を求めなければならない。」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第15条第2項第12号
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第15条第2項第10号

サービス担当者会議については、原則として利用者等が同席した上で行わなければならない。
原則として利用者等が同席した上で開催しなければならない。やむを得ず同席が困難な場合は、本人の状態を考慮しつつ意思・意向を推定し、その理由を会議録等に記録しておくことが適切である。

令和6年度障害福祉サービス等報酬改定に関するQ&A(第1版)問80

⑥ 同意・交付

計画案を利用者または保護者に説明し、文書で同意を得て交付する。
「文書により同意を得て、利用者等に交付しなければならない。」
「相談支援専門員は、障害児支援利用計画を作成した際には、当該障害児支援利用計画を障害児等及び担当者に交付しなければならない。」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第15条第2 項第10号、第11号、第14号
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第15 条第2項第8号、第9号、第12号

~電磁的交付~
交付・説明・同意等は、相手方の承諾により電磁的方法で行うことができる。
「指定特定相談支援事業者及びその従業者は、交付、説明、同意その他これらに類するもの(以下「交付等」という。)のうち、この命令の規定において書面で行うことが規定されている又は想定されるものについては、当該交付等の相手方の承諾を得て、当該交付等の相手方が利用者である場合には当該利用者の障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ、書面に代えて、電磁的方法(電子的方法、磁気的方法その他人の知覚によって認識することができない方法をいう。)によることができる。」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第31条第2項
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第31 条第2項

⑦ 市町村への提出

同意済の計画案を速やかに市町村へ提出する。
「サービス等利用計画の写しを市町村に遅滞なく提出しなければならない。」

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第6条第2項
障害児相談支援:
児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第6条第2項

⑧ モニタリング(居宅訪問・面接が必須)

計画相談支援および障害児相談支援のいずれにおいても、利用者の居宅等を訪問し、面接を行い、その結果を記録することが義務づけられている。
「相談支援専門員は、モニタリングに当たっては、利用者及びその家族、福祉サービス等の事業を行う者等との連絡を継続的に行うこととし、法第5 条第23 項に規定する主務省令で定める期間ごとに利用者の居宅等を訪問し、利用者等に面接するほか、その結果を記録しなければならない。」


計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28号)第15条第3項第2号
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29号)第15条第3項第2号

モニタリング結果については、以下に掲げる場合、その他必要な場合に市町村に報告すること。

  1. 支給決定の更新や変更が必要となる場合
  2. 対象者の生活状況の変化からモニタリング期間の変更が必要な場合
  3. モニタリング実施月を設定し直す必要がある場合

ただし、市町村によっては、定期報告を求める場合があるため、自治体ごとのルールに基づいた適切な対応が求められる。

通知「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定計画相談支援の事業の人員及び運営に関する基準について」(令和6年3月29日障発0329第33号)
※障害児相談支援においても、計画相談支援と基本的に同様の運用であることから、本通知の趣旨に準じた運用が求められる。

⑨ 計画変更(再度の会議・同意・交付)

モニタリングや生活状況の変化を踏まえ、必要に応じて計画を変更する。その際には、アセスメント・サービス担当者会議・文書による同意・交付・市町村提出といった一連のプロセスを再実施する。
「相談⽀援専⾨員は、サービス等利⽤計画の作成後、サービス等利⽤計画の実施状況の把握(利⽤者についての継続的な評価を含む。以下「モニタリング」という。)を⾏い、必要に応じてサービス等利⽤計画の変更、福祉サービス等の事業を⾏う者等との連絡調整その他の便宜の提供を⾏うとともに、新たな⽀給決定⼜は地域相談⽀援給付決定が必要であると認められる場合には、利⽤者等に対し、⽀給決定⼜は地域相談⽀援給付決定に係る申請の勧奨を⾏うものとする。」
また、「前項第⼀号から第九号まで及び第⼗⼆号から第⼗四号までの規定は、第⼀号に規定するサービス等利⽤計画の変更について準⽤する。」

計画相談⽀援:障害者総合⽀援法に基づく「指定計画相談⽀援の⼈員及び運営に関する基準」(平成24年厚⽣労働省令第28号)第15条第3 項第1号および第3号
障害児相談⽀援:児童福祉法に基づく「指定障害児相談⽀援の⼈員及び運営に関する基準」(平成24年厚⽣労働省令第29号)第15条第3 項第1号および第3号

~意思決定支援の重要性~
計画相談支援・障害児相談支援においては、利用者の自己決定の尊重および意思決定支援が極めて重要とされている。
すべての支援過程において、利用者の意思や選好、判断能力を丁寧に把握し、必要に応じて本人の理解を支える手段を講じることが求められている。

計画相談支援:障害者総合支援法に基づく指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第28 号)第15条第1項第2号、第2項第1号・第6号
障害児相談支援:児童福祉法に基づく指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(平成24年厚生労働省令第29 号)第15条第1項第2号、第2項第1号

~ ICT の活用にあたっての留意事項~
「交付、説明、同意その他これらに類するもののうち、この命令の規定において書面で行うことが規定されている又は想定されるものについては、当該交付等の相手方の承諾を得て、当該相手方が利用者である場合には当該利用者の障害の特性に応じた適切な配慮をしつつ、書面に代えて、電磁的方法によることができる。」

令和3年厚生労働省令第55号(障害者総合支援法関係省令の一部改正) 第31条第2項

自己点検用チェックリスト

  1. 契約・重要事項説明・個人情報同意
    • 契約書および重要事項説明書を交付・説明・同意取得しているか
    • 個⼈情報の取り扱いについて⽂書で同意を得ているか
  2. 支給決定申請支援
    • ⽀給決定の更新・新規申請に必要な援助が⾏われているか
  3. アセスメント
    • 利⽤者の居宅訪問および⾯接によりアセスメントを実施しているか
    • アセスメント内容(⼼⾝状況、環境、希望など)を記録しているか
  4. サービス等利用計画案の作成
    • アセスメント結果に基づき、希望する⽣活を反映した計画案が作成されているか
    • 希望する⽣活・⽣活課題・⽬標・サービス内容・量・達成時期等が具体的に記載されているか
    • インフォーマルな地域資源の活⽤が計画に位置付けられているか
  5. サービス担当者会議
    • 計画案の作成・変更ごとにサービス担当者会議を開催しているか
    • 利⽤者本⼈が原則として同席しているか(できない場合は理由記録があるか)
    • 関係者から専⾨的意⾒を聴取し、記録しているか
  6. 同意・交付
    • 計画案の内容を利⽤者または保護者に説明し、⽂書で同意を得て交付しているか
    • 計画書をサービス提供事業所などの担当者に交付しているか。
    • 電磁的⽅法による交付を⾏う際は、相⼿⽅の承諾を得ているか
  7. 市町村への提出
    • 同意取得後、計画案を速やかに市町村へ提出しているか
  8. モニタリング
    • 主務省令で定められた期間ごとに居宅訪問・⾯接を⾏っているか
    • ⾯接結果や⽣活状況の変化を記録しているか
    • 市町村への報告は適切になされているか
  9. 計画変更
    • モニタリングや⽣活変化に基づき、必要に応じて計画を変更しているか
    • 計画変更に伴い、再度サービス担当者会議・同意・交付等を⾏っているか
  10. 意思決定支援
    • すべての⽀援過程で利⽤者の意思や選好を尊重しているか
    • 判断に困難がある場合も、理解を⽀える⼯夫を⾏っているか

参考

・障害のある人に対する相談支援について(厚生労働省Webサイト)
・指定計画相談支援の人員及び運営に関する基準(厚生労働省令第28号)
・指定障害児相談支援の人員及び運営に関する基準(厚生労働省令第29号)
※本資料は令和7年5⽉時点の制度・通知等に基づき作成されています。

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